優しさをかたちにして 生活を支える仕事

道路ができる仕組みを、考えたことはあるでしょうか。学校の通学路や近所の橋が新しくなっても、実際にどんな人たちが、どうやって道や橋を整備しているのか知らないまま過ごしている人は多いかもしれません。ましてや土木と聞くと、重たいものを運ぶ肉体労働ばかりをイメージして「自分には合わない」と敬遠してしまうこともあるでしょう。でも、ちょっと待ってください。土木は今、IT化や新しい技術を取り入れながら、人々の暮らしを支える大事な仕事として進化を続けています。

今回取材したのは、道路や橋、河川の保護などのインフラ整備を中心に行う藤木建設株式会社(以下藤木建設)。
特に「現場管理」というポジションがメインです。「現場管理」と聞くと、職人さんをまとめ上げて厳しく指示を飛ばすだけのイメージがあるかもしれませんが、話を聞いてみるともちろん現場で作業を行う人たちの命を守る仕事でもあるため、時には厳しいことを言わなければならなかったり、多くの知識や経験が必要だったりします。しかしそういった面が全てではなく、チームで一つの仕事を行うため、実は一番はコミュニケーションが大切。怒号が飛び交ったり、厳しい現場を想像しがちですが、そんなことはなく実際は明るい場面の方が多いといいます。

「キツイ・汚い・危険」の“3K”という先入観だけで、土木を遠ざけてしまうのはもったいない。
できあがった道路や橋を見て「これ、自分がつくったんだ」と誇らしく思える瞬間があるのも、この仕事ならでは。さらに高校卒業後に資格取得を目指しながら一人前の管理者になる道も開けている。今回は藤木建設の社長をはじめ現場で活躍する中堅社員の方に土木の現場管理のリアルな魅力をうかがいました。

自分の頭と体をフルに使って、将来ずっと残る「地図に刻まれる仕事」に挑戦してみませんか。

目次

やりたいことが諦められなくて

まず、お話を伺ったのは速水さん。実はお兄さんに誘われて前職の職場から転職していたのだそう。
高校時代は土木科に在籍していたものの、卒業後は建築系の別会社に就職して葛藤があったといいます。

「前職の住宅会社に入ったときは、どうしても自分が思い描いていたものとギャップを感じたんです。でもこの会社に入り、アスファルトを敷く様子や側溝(そっこう)・カーブを整える流れを間近で見たとき、『あ、これが自分のイメージしていた土木かも』とワクワクしました」

印象的だったのは、初めて任された現場。すでに工期が半分ほど進んでいる状態から合流したので、右も左もわからないままスタート。戸惑いながらも、三ヶ月後に無事に完成した瞬間、大きな達成感に包まれました。

「それまで、『自分に続けられるのかな…』という不安が正直ありました。でも終わってみたら、『ここ、自分がやったんだ』と言えるのがこんなにうれしいことなんだと知りました」

現場仕事というと「毎日が体力勝負」というイメージがあるかもしれませんが、「想像より汚れないし、むしろメリハリのある働き方ができています」とのこと。工期のスケジュール管理がうまくいけば残業を減らしやすく、オフをしっかり取れるのも特徴だそうです。

「学校の工場実習みたいに、ずっと同じ場所に張りつく感じじゃないですね。現場は一定期間で終わり、次の現場に移動する。外仕事で季節を肌で感じられるのもいいところです」

同じ現場は一つとしてない オーダーメイドな仕事

高校を卒業して20年以上この業界で働いているベテラン管理者の速水さん(お兄さん)は今では様々な経験を重ね、会社の“柱”として大きな案件も任されています。しかし入社当初は、「人が足りないから全部あなた一人でやってね」というような状況もあったそうです。

「昔は休みが日曜日しかなかったりして、今でいう“ブラック”な状態だったんじゃないかと思います。でも当時はそれが普通だと思っていたし、とにかく必死でした」と笑顔で語る速水さん。

それでも続けられたのは、現場が完成したときの喜びが大きかったから。道路や橋の工事は、完成すれば何十年も残るもの。車で家族と遠出をするときに、自分が手がけた橋や高速道路を見かけるたび「これはパパが作ったんだぞ」と誇らしい気持ちになるといいます。

「うちは直営部隊(重機などを自社で動かす職人チーム)をもっているので、管理だけの会社に比べて、現場のコントロールがしやすいんです。現場管理者の裁量が大きいのも魅力ですね。たとえば雨で工期がずれこんだら、職人を増やすか、作業時間を伸ばすか、それとも機械をもう1台追加するか。そうした判断次第で“自分たちの時間”も変わる。休みが取りやすくなるよう、現場会議もこまめにしています」

速水さんが若手を指導するうえで大事にしているのは、「わからないことがあれば、遠慮せず口に出す」こと。

「『わからないことが何か、わからない』状態ってあるじゃないですか。でも大丈夫です。そういうときは、とにかく周りに聞いて、状況を整理するところから始めればいい。IT化で図面や測量がラクになっている分、昔より早く成長できると思います。資格を取れば年収だって上がるし、“自分の現場”を一つ任されるだけでもやりがいが段違いですよ」

家業を継いだが、いつの間にか天職に

ご両親が同業を営んでいて、自然な流れで土木の道に進んだ社長。
専門学校で土木を学び、卒業後は別の管理会社で修行を積んでから家業に戻り、今では経営を担っています。

「実は、『やりたくて始めた』というより、『まあ気がついたらやっていた』感覚だったんです。でも地元の道路や橋の建設に関わっているうちに、『これって地域全体を支える仕事なんだ』と気づきました。そうなると街づくりへの興味も自然と広がっていき、地元の会議や取り組みにも参加するようになりました」

社長いわく、土木はまだまだ“3K”のイメージが根強いため、若い人材を集めるのが簡単ではないとのこと。
しかし実際はIT化や機械化が進んでいて、かつてのような長時間労働や危険作業ばかりではありません。

「うちは管理者も直営部隊もいるから、管理をしつつ自分で重機を動かすような体験もできる。管理だけやっている会社だと指示を出す立場に終始するけど、うちでは“自分の手も動かす”楽しさを味わえるのが大きいですよ。
さらに“自分の現場”を任せてもらえるようになると、仕事量は増えますが自由度や裁量は一気に広がります。若いうちからキャリアを切り拓けるところが、土木ならではの魅力ですね」

頭を使い、体も動かす現場管理という仕事

土木・建設業界は肉体労働のイメージが先行しがちですが、現場管理の仕事はむしろ「頭を使う」要素が多いのが特徴。あらかじめ決まっている工期(こうき:完成までの期限)に向けて天候や地盤の状況を見極め、職人さんの人数・使用する重機の台数・段取りなどを考えるのも我々の仕事です。

雨で工期が遅れたら「このままやりくりできるか」「代わりの方法はあるか」と常に状況を把握し、必要に応じて計画を立て直す。逆に順調なら早めに終わり、休日を増やせるケースもあるそうです。判断がうまくはまればスムーズに進み、その分休みもしっかり取れる。決断を誤れば突貫工事になり、休日返上で走り回る。だからこそ、自分の采配が身にしみるおもしろさがあります。

また、建設業では業界全体で働き方改革が進んでいる最中。同社でも、ITを活用した工程管理ソフトや高性能な測量機器を導入していて、書類のペーパーレス化も進めています。年間休日数を増やしたり、有給を使いやすくする取り組みもあり、「昔のように徹夜や夜勤が当たり前」という環境ではなくなりつつあるとのこと。

キャリアは自分の手でひろげられる

管理者として独り立ちするには、施工管理技士(二級・一級)といった資格が必要です。二級の場合は実務経験が2年程度あれば受験可能。資格を取ると現場の管理者として名簿に登録され、給料もアップしやすくなります。さらに一級を目指したり、重機の資格を取るなど、自分の興味や得意分野に合わせてステップアップする道が開けています。

公共工事は、道路や橋をつくるだけではありません。災害が起きたときに第一線で被災地の復旧に携わるなど、地域のインフラを支える仕事でもあります。社長自身、街づくりの会議や行政との連携に積極的に関わるなかで、「どんな道路や公共施設があれば安心・安全な暮らしにつながるか」を考える機会が多いそうです。SDGsや環境への取り組みも注目される今、社会インフラ整備の重要性はさらに高まってきています。

お三方の話を聞いてこの会社は「若いうちに大きな仕事にチャレンジしたい」「自分の手で何かをつくりあげたい」「地図に残る仕事がしたい」という人にはうってつけの職場だと感じました。

最初のうちは用語や段取り、書類づくりなど覚えることが山ほどあるかもしれません。けれど、そこで踏ん張って経験を積めば、資格取得とともに年齢に関係なく現場を任される可能性がある。自分の裁量で休みをうまく調整できるのも、管理のポジションならではのメリハリある働き方です。

泥にまみれるイメージがあるかもしれませんが、実際はそこまで汚れる仕事ばかりではなく、IT機器や機械を使うシーンも多いです。季節や天候を感じながら、頭も体も存分に動かす日々の先には、自分がつくった道路や橋が何年も何十年も残る。

誰かが気づかなくても、社会を下支えしている手ごたえを感じられるのが土木の魅力。

「手に職をつけたい」「大きなモノづくりに関わってみたい」。そんな思いがあるなら、ぜひ選択肢に入れてみてください。学校の勉強や部活だけでは味わえないスケールと達成感が、ここにはあります。自分の采配で現場を動かしながら、地図に残る仕事をつくりあげる世界を、あなたの新しい未来として考えてみてはいかがでしょうか。

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